MATLABで学ぶ振動工学 最大虚数部法&半値幅法

はじめに

振動工学やモード解析をご存じの方であれば、一度は読んだことがあると言われているバイブル的な書籍「モード解析入門」について再復習しております。

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再復習で学んだことをMATLABコードを示しながら解説したいと思います。 今回は6.2.2~6.2.3項の「周波数応答関数の虚部を用いる方法」P.347から復習します。長松先生は「半値幅法」という言葉は使っていませんが、一般的には6.2.1~6.2.3は「半値幅法」と呼ばれているモード減衰比ζを求めるための手法に分類できると思います。

モード解析入門について他の章も解説しているので、過去の記事を読んでいない方、この章や節以外を復習したい方は下記記事を参照ください。

下記記事が目次となっており、各章や節にアクセスできるようにしています。

長松昭男著「モード解析入門」のMATLABコード付き解説
長松昭男先生の「モード解析入門」をMATLABコード付きで解説しています。

6.2.2 周波数応答関数の虚部を用いる方法(最大虚数部法+半値幅法)

6.2.1項の復習になりますが、隣り合う共振周波数が十分に離れている場合はその共振峰を1自由度とみなせます。そのため、コンプライアンス(変位/力の周波数応答関数)は式(6.1)で表すことができます。

$$
G(ω) = \frac{ 1/K  }{ 1 – β^2 + 2jζβ }  , β=\frac{ ω }{Ω} \tag{6.1}
$$

式(6.1)の実部と虚部は、式(6.14)で表すことができます。

$$
G_R(ω) = \frac{ (1 – β^2)/K  }{ (1 – β^2)^2 + (2ζβ)^2 }  , G_I(ω) = \frac{ -2ζβ/K  }{ (1 – β^2)^2 + (2ζβ)^2 }   \tag{6.14}
$$

ここからは6.2.1項の半値幅法と同じ流れです。ちなみに半値幅法とは、周波数応答関数からモード減衰比を推定する手法として良く知られていますが、モード減衰比がわかるとモード特性全てを求めることができます。

1次共振峰の拡大図を図1に示します。

図1  1次共振峰の拡大図(m1の自己コンプライアンス)

図1に示すように式(6.16)が成立していますね。
$$
|G_I(ω)|_{max}=|G(ω)|_{max} ≒ \frac{ 1  }{ 2Kζ }   \tag{6.16}
$$

式(6.16)の最大値|G|maxの1/√2になる2点(最大値から-3dBとなる2点)の周波数f1とf2を読み取り、共振周波数f0からモード減衰比ζを求めます。

$$
ζ= \frac{ f2-f1  }{ 2f_0 }   \tag{6.7.1}
$$

なお、共振周波数f0を使わないでも式(6.7.2)で求めることができます。

$$
ζ= \frac{ f2-f1  }{ f2+f1 }   \tag{6.7.1}
$$

ここで、このコンプライアンスG(ω)が自己コンプライアンスの場合を基準として、モードベクトルの振幅を1とするので、式(6.5)のKはモード剛性kと等価として扱えます。自己コンプライアンスとは、例えば、m1を加振した時のm1の応答から求めた伝達関数のことを指します。

モード剛性kが求まると、下式より簡単にモード質量が求めることができます。

$$
Ω^2 m = k
$$

ここまでで、共振周波数(最大ピーク値の周波数なのですぐわかる)、モード減衰比ζ、モード剛性k、モード質量mが判明しています。あとモードベクトルさえ判明すれば全てのモード特性を取得できたことになります。

自己コンプライアンスの場合はモードベクトルの成分が1となりました。
例えば、図3の場合では共振周波数9.432Hzのときに、m1に対応するモードベクトルの成分が1です。
ではm2、m3、….はどのように求めるのでしょうか?

それは相互コンプライアンスGis(加振点がiで応答点がs)を測定して求めることになります。φi=1なので、モードベクトルの成分φsは式(6.11)となります。

$$
K_{is}= \frac{ k  }{ φ_s }   \tag{6.11}
$$

また、相互コンプライアンスの最大値との関係は式(6.12)となります。

$$
|G_{I is}(ω)|_{max} ≒ \frac{ 1  }{ 2K_{is}ζ }   \tag{6.12}
$$

したがって、モードベクトルの成分φsは式(6.13)で求めることができます。
$$
φ_s ≒ 2kζ|G_{I is}(ω)|_{max}   \tag{6.13}
$$

例題

では、図3を例題に解いてみましょう。

答え(バネマスモデルで設定したモード特性)

図3の例題は、4自由度のバネマスモデルでモード特性は下記です。
1次の共振周波数:9.43205759496419Hz
モード減衰比:0.1%
モード質量:1
モード剛性:3512.14651375420
モードベクトル:
v=[-0.345365005476218
-0.487723195715426
-0.554079400516416
-0.579521453681323];

なお、半値幅法ではモードベクトルの加振点が1として正規化されるので、モードベクトル、モード質量およびモード剛性の値はここの設定値である「答え」とは変わってしまいます。

なので、m1を加振して、m1のモードベクトルの成分が1になるようにしておきましょう。
モード減衰比:0.1%
モード質量:8.38384691873869
モード剛性:29445.2987274969
モードベクトル:
v=[1
1.41219633715614
1.60432988788892
1.67799703065524];

6.2.2項での算出方法で求めた値

共振周波数f0:9.4321Hz
最大値が1/√2になる周波数f1:9.4260Hz
最大値が1/√2になる周波数f2:9.4381Hz

式(6.7.1)よりモード減衰比ζは約0.1%ということになりますね。ただ、6.2.1項の方が精度が高かったですね。

f0=9.4321;
f1=9.4260;
f2=9.4381;
zeta_hanchi=(f2 - f1)/(f0*2)
zeta_hanchi =

 6.4143e-04

式(6.5)より、モード剛性kが求まり、モード質量mも求まります。

モード剛性:45907.0580387381
モード質量:13.0708229511585

式(6.13)よりモードベクトルを求めてみましょう。

phys =

    1.0000
    1.4122
    1.6043
    1.6780

正しくモード特性を同定できていることがわかります。

 

実験データで半値幅法を使うときの注意点

この記事ではMATLABで周波数応答関数を求めているので、周波数分解能が細かくできます。しかし、実験データを使う場合は細かくできない場合がありますので、ご注意ください。細かくできないと、半値となる周波数がわからず、半値幅法が適用できません。

実験データで周波数分解能を細かくしたければ、時刻歴データを長めに測定し、FFTの点数(ライン数)を大きくとることで周波数分解能を細かくできます。もし、インパルス加振をしていて、時刻歴データが1s程度しか測定してなかった場合は、疑似的に無音(振幅が0のデータ)を足すことで、周波数分解能を上げることができます。

6.2.3 周波数応答関数の実部と虚部を用いる方法

図2に示すように、実部と虚部が等しくなる周波数において、式(6.18)が成立します。

$$
β=\frac{ ω }{Ω} ,  Δβ^2≒4ζ^2 \tag{6.18}
$$

図2 実部と虚部が等しくなる周波数

つまり、式(6.18)からモード減衰比ζが求めることができます。あとは、6.2.1項の半値幅法や式(6.16)からの流れと同様です。

6.2.3項での算出方法で求めた値

式(6.18)より求めたモード減衰比ζは約0.1%ということになります。6.2.2項の算出方法よりも精度が高くなりました。

zeta_623 =

   9.9660e-04

 

MATLABプログラム(例題の解答)

計算周波数(freq)の周波数分解能やモード減衰比(modal_dampimg)を変更して、ほかのケースでも試してみてください。

clear all;clc;close all

freq=9.43-0.1:0.0001:9.43+0.1; %計算周波数の定義
w=2*pi*freq; %角振動数

m_vec=ones(1,4);
k_vec=(1:4)*2*10^4;
[M]=eval_Mmatrix(m_vec); %質量行列
[K]=eval_Kmatrix(k_vec); %剛性行列

[V,D]=eig(K,M); %固有値D、固有ベクトルV
for ii1=1:length(m_vec)
    V(:,ii1)=V(:,ii1)/V(1,ii1); % 加振点m1のモードベクトルの成分が1になるように正規化
end
wn=sqrt(diag(D)); %固有角振動数
fn=wn/(2*pi); %固有振動数

mr=diag(V.'*M*V); %モード質量行列
kr=diag(V.'*K*V); %モード剛性行列
c_cr=2*sqrt(mr.*kr);
modal_dampimg=0.1*0.01; %モード減衰比(とりあえず0.1%と設定)
cr=c_cr*modal_dampimg; %モード減衰係数

F=zeros(length(m_vec),1); F(1)=1; %外力ベクトル(全周波数帯を1で加振する)
Xj=zeros(length(m_vec),length(freq)); %変位ベクトル(計算前にベクトルを定義してメモリを確保)

% % % % モード法
ii=1; %加振点 (加振点が複数ある場合はfor ii=1:kength(F)のループを追加すればよい )
for ii1=1:length(m_vec) %応答点
    for ii2=1:length(wn)
        Xj(ii1,:)=Xj(ii1,:)+V(ii1,ii2)*V(ii,ii2)./( -mr(ii2).*w.^2 + 1i*cr(ii2)*w +kr(ii2) )*F(ii);
%       横ベクトル =横ベクトル  +  スカラー  ×スカラー   ./( スカラー×横ベクトル + スカラー×横ベクトル +スカラー)×スカラー
    end
end




figure
semilogy(freq,abs(Xj(1,:)),'k')
hold on
xlabel('周波数 Hz')
ylabel('変位 [m]')
xlim([freq(1) freq(end)])
semilogy(freq,abs(real(Xj(1,:))),'r')
semilogy(freq,abs(imag(Xj(1,:))),'b')
legend('|G|','|G_R|','|G_I|')

semilogy([8.5 10],[1 1]*max(   abs(imag(Xj(1,:)))  )/sqrt(2),'--k')


% % % % % % % % % % % 6.2.2項 最大虚数部法&半値幅法
f0=9.4321;
f1=9.4260;
f2=9.4381;
zeta_hanchi=(f2 - f1)/(f0*2)
Gmax=max(abs(imag(Xj(1,:))));
k_hanchi=1/(2*zeta_hanchi*Gmax);
m_hanchi=k_hanchi/(2*pi*f0)^2;

% Gis=max(  abs( imag(Xj(:,:)) ) ,[],2  );
% phys=2*k_hanchi*zeta_hanchi*Gis;
[Gis,id]=max( abs( imag(Xj(:,:)) ) ,[],2 );
Gis=Gis .* imag(-Xj(:,id(1)))./abs(Xj(:,id(1))) ;
phys=2*k_hanchi*zeta_hanchi*Gis;



% % % % % % % % % % % 6.2.3項
Omega=2*pi*f0;
w1=2*pi*9.4227;
w2=2*pi*9.4415;
beta1=w1/Omega;
beta2=w2/Omega;

delta_beta=(beta2-beta1);
zeta_623=sqrt( delta_beta^2/4 )

functionファイル

function [M]=eval_Mmatrix(m_vec)

M=diag(m_vec);

end
function [K]=eval_Kmatrix(k_vec)

K=zeros(length(k_vec));
for ii1=1:length(k_vec)
    if ii1==1
        K(ii1,ii1)=k_vec(ii1);
    else
        K(ii1-1:ii1,ii1-1:ii1)=K(ii1-1:ii1,ii1-1:ii1)+[1 -1;-1 1]*k_vec(ii1);
    end
end

end

 

 

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